川があった。 大きな川だった。 その川の中腹に、一人で立っていた。 ときどき、強い風が吹く。 そのまま川面に倒れ込んで、 流れに身を任せてみたくなる。 いつしか、辺りは暗くなっていた。 夏の夜の闇。 遠くから 祭り囃子が響いてくる 一つ、また一つと …
崩れかかった建物の前、男が一人うずくまっている。 時折耳を揺らす物音に、顔を上げては、また下ろす。 とりわけ、人の足音には敏感に。 ――また、あんたか。 と、男は声にならない声で言う。 いつの間にか、音もなく老人が立っている。 ――もう、放っておい…
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