2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴミ箱の夢

小学校の卒業アルバムには 「僕の夢」という題で書かれた作文があった 何も知らなかった頃に 間に合わせで書いた 他愛もない夢 日中のオンラインゲーム世界の中は 比較的 閑散としていた いるのは学生やフリーターなど 暇を持て余している者たちなのだろう …

火の鳥

火炉から伝わる振動で 室内の空気が震えていた 重い隔壁に遮断されているにもかかわらず バーナーの熱が 鼻を焦がすようだった 外では 遮るもののない太陽が 青空にただ一点 光と熱を放っていた 硬いジュラルミンの台に 足を乗せ 隔壁にある たった一つの小…

かたちのない針

ヤマアラシなあなたは いつも なにかと考え無しに 針という針を 逆立てて 誰かれ構わず 体当たり あなたが喋ると みんなが黙る あなたが通ると みんなが避ける あなたが怒ると 誰もが謝る だけど 針の届かない 壁の向こうでは みんながあなたを笑ってる 物笑…

北風さんと太陽さん(2/2)

第1話「どうしてだい、南風さん?」 北風さんには、南風さんの言葉をすんなりと受け止めることはできませんでした。 「お前、自分が大気のバランスを崩してるってこと、気づいてねえのか?」 南風さんは今まで吹いていた北風が止むことで、色んな気候変動が…

北風さんと太陽さん(1/2)

あるところに、かわいそうな北風さんがいました。 北風さんは動物たちが大好きなのに、北風さんが近づくと、その強い風によってみんな逃げ隠れてしまうのです。 北風さんは思いました。 「いつもにこにこと明るくて、人気者の太陽さんみたいになりたいなぁ」…

ありがとう

「ありがとう」 って言ってほしくて 親切するのは、 偽善だって 誰かが言ってたけれど ありがとうって 言ってもらえると こそばゆくて うれしくて いい気分になるから また、いいことをしよう って思えるんだよね。 だから、僕も言うよ 「ありがとう」ってね

輪(わ)

心臓の音が聞こえる 満員の観客席が静まりかえり 演技を見守る 終了十秒前を知らせるブザーが鳴り 最後のタンブリングを駆ける 響き渡る着地の音 フィニッシュを決めた両手は 拳を握りしめた しなやかな剣先が 胴を捉えた 赤のランプが光る 諦めかけていた観…

「ただいま」「おかえり」「また明日」

苦しくて 悲しくて みじめで 涙が込み上げるとき 誰にも相談できず 抱え込んで その重さに 圧し潰されそうなとき どうか、負けないで 生きることを 諦めないで 誰だって 一人きりで生まれてきたわけじゃない あなたの命を かけがえなく思っている人は きっと…

ある晴れた日に〜映画『おおかみこどもの雨と雪』を観て〜

太陽がだんだんと高く上っていくころ 草むらではバッタやテントウムシが跳ね回り 林ではミンミンゼミが はちきれんばかりに鳴いている 私は鍬を振るう手を休めて 汗をぬぐった もうすぐ 秋作の植え付けの時期だ 昼前に、郵便配達のおじさんがやってきた 娘が…

私の戦うべき場所

二度目のオーディションの通知を開いて また閉じて 私は宙を見上げて 大きなため息をついた。 失望と落胆 悔恨と 少しの安心 自分を試したかった 何が成せるのか 知りたかった でも その舞台にすら立てなかった 太陽は 今日もフォルティッシモで輝いている …