2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

跳躍

小高い丘に ひとりきり寝そべって 青空を見上げていた いつまでも 飽きることなく 刻一刻と変わる 白雲の表情を追い続けていた 吸い込まれそう そう思ったとき ふと 地面から体が離れた 重力から解き放たれ いや、反転し、 真っ逆さまに 空に落ちていく 空に…

アバター

あなたにだけは知られたくない あなたにだけは知ってほしい あなたになら教えてもいい 本当の自分を 現実を生きている私を 真実、死んでいるような私を そこにあるのは 薄く、確かな境界線 一線を踏み越えれば 二度と元には戻れない あなたと私を守る壁を 壊…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 3

目次へ 「――何か、あったの?」 マンションの最寄りのバス停で。 アルフは今朝も、サクラ=ミズチに会った。彼女は高校の同級生であり、幼馴染でもある。アルフが「近しい」と感じる人たちの中の一人だ。 いつものように「おはよう」と、互いに挨拶を交わした…

エレクトロニカル・パレード

「ほんとうの君」はどこ? そう問いたくなるときもあった。 「別に、いいじゃないか」 『君』は確かに此処にいる その実在が デジタルな信号に過ぎなくても、 私はそんな『君』に惹かれたのだから 会わない方がいいこともある 会ってしまえば、きっと会う前…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 2

目次へ 第一章 「私を殺して」 初対面の僕に向かって、少女はそう言った。 彼女の全身は真っ赤な血にまみれていた。 周囲には、人の気配はない。 僕は後ずさりしながらも、彼女の手を振り払えずにいた。 声の出し方さえ、思いだせずにいた。 ◇ 『……ピピピピ…

感動と文芸創作の種類

もう何年前のことだろうか。シドニィ・シェルダンの『私は別人』という小説を昔、読んだ。 その小説の中で、一代で富を築いたトビー・テンプルという天才コメディアンが、修行時代に師匠に言われた言葉があった。 その内容をぼんやりと覚えている。 師匠「コ…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 1

目次へ プロローグ 「ありがとう」 少女は満面の笑顔で言った。 今まで一度も目にしたことがない、眩しい笑顔だった。 その陶器のように白い腕から徐々に体温が削がれて、僕の腕から滑り落ちていく。 ――待ってくれ。 声にならなかった。何もかもが唐突すぎた…

「一人 Twitter 連詩」をやってみて

先日、Twitter 上で「一人連詩」なる試みをやってみました。 連詩は、本来であれば複数人で行うものですが、「小説の連載があるのだから、詩の連載があってもよいのではないか」という発想が裏にはありました。 一人で少しずつ詠んでいく、という形でも成立…

オフライン ~アナザー・デイ~

ケータイを 家に忘れた メールも、ネットも、ゲームもできない。 何もできない。 誰にも、何も連絡できない。 私と世界を結ぶ線が 今、何もない。 今日は一日、オフライン。 何をしていいか わからない 当て処なく 街をさまよう 道端の猫に愛想をかけてみる …

オフライン

ケータイを、家に忘れた。 帰る家をなくしたような 不安で落ち着かない気分 どうしていいのか わからない 私をどこかに繋ぐ線が、いま、何もない。 がたんごとん ふと、揺れる電車の鼓動に気づく ぷしゅっとドアが開く 靴音がホームに広がる 太陽がまぶしく…

マリアージュ

あなたと、わたし 別々の 役割を持って 同じ台地に 生を享け 暖かい海に この身を捧げる ああ、やっとひとつになれたね 灼熱のマグマで どろどろに融け合い 互いの境界線さえ 失った ――ラストダンス 誰かと誰かを結ぶため。 「踊ろうか」 彼の言葉に、私は耳…

私のいまの詩のつくりかた

中学時代、日常的に詩を書いていた時期があった。「どうしてそんなにたくさん書けるの?」クラスメートの女子にそう聞かれたことがある。「詩を書くのって難しくない?」と。「簡単だよ」私はあっさりと言ってのけた。「その日あったことを書けばいいんだか…

夏の日

「川を渡ろう」 夫が手招きする。 私は目を見張りつつも、差し伸べられた手をとる。 夫が淵に進んでいく。ねえ、と声を掛けるが止まらない。 夫は肩まで川に浸かり、頭を沈めた。 私は手を振り解こうとするが、できない。 苦しい。息ができない。 ブラックア…