2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

エビル・コスチューム (6/6)

目次 ドスンッ! カンナは渋谷センター街入り口のツタヤ前で、ふと意識を取り戻した。隣を歩いていたマサキが、落ちていた空き缶に足を滑らせた。カンナもそれに巻き込まれ、二人仲良く派手にすっ転んでしまったのだった。 どうやら一瞬、意識を失っていたら…

エビル・コスチューム (5/6)

目次 それは、あっという間の出来事だった。 「リエ……? 何してるの? 早く逃げて!!」 突然、自分たちの前に立ちはだかった悪魔姿の女性に向かって、カンナは叫んだ。 ジャック・オー・ランタンを被った黒衣の男は、銃口を真っ直ぐリエに向けている。 だが、…

エビル・コスチューム (4/6)

目次 「じゃあ、俺たちはこれからクラブに行くから」 マサキがリエに対して言った。 三人はカラオケを終えた後、渋谷センター街入り口のツタヤ前まで、歩いて来ていた。 「楽しかった! また遊んでね」 リエは無邪気に笑った。 カンナは、リエの顔を改めてじ…

エビル・コスチューム (3/6)

目次 ここはどこだ。 井の頭線の上り電車の中で、ジャック・オー・ランタンを被った男は意識を取り戻した。 そうだ。渋谷に向かっていた。 昨夜、デスクで一度意識を失ってから、記憶が途切れがちだった。頭がずきずきと痛む。 男は右手でコートの中にある物…

ハロウィーン特別企画・短期連載小説「エビル・コスチューム」に寄せて(目次込み)

もうすぐハロウィーンですね! みなさん、準備はばっちりでしょうか。 さて、月曜からハロウィーン特別企画と称して、新作の短編小説の連載を行っています。 『エビル・コスチューム』目次 第一話 / 第二話 / 第三話 / 第四話 / 第五話 / 第六話 / あとがき …

エビル・コスチューム (2/6)

目次 「マサキ、やる気なさすぎ」 カンナは待ち合わせに遅刻して来たマサキに、容赦ない駄目出しをした。カンナと同じ専門学校に通う彼は、ドン・キホーテで買ったらしい囚人服の上下を着ただけだった。 そもそも、ハロウィーンは大人のコスプレイベントでは…

エビル・コスチューム (1/6)

目次 どうにでもなってしまえばいい。 安アパートにある居室で、男はぼうっとパソコンのモニタを眺めながら、煙草をくゆらせていた。デスクの上は雑然としている。 キーボードの左側に、サバイバルナイフと拳銃があった。拳銃はインターネット上の、とある掲…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 11

目次へ トゥルーバニラン。少女は確かにそう言った。 それは、正史一七四二年に終結した『ローマニラの赤い薔薇期』と呼ばれる内戦によって、絶滅させられたはずの民族の名だ。 ユーレディカ、と少女は名乗った。 「ユーリーでいいわ」と彼女は言った。アル…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 10

目次へ アルフにとって長い、しかし、たった数秒ほどの時間が経った。 名も知らぬ少女は、アルフの右拳を自身の心臓に突き立て、まるで自身を貫くかのように力を込めた。 「……ぅぐぁっ」 アルフは呻いた。少女の爪が腕に突き刺さり、右拳からめりめりと骨が…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 9

目次へ それは血痕だった。 どこからか、カラスの鳴き声が聞こえた。見上げると一羽のカラスが、剥き出しのコンクリートのビル壁から飛び去って行った。 十二階建てのそのビルは、完成間近で放棄されたもののようだった。ビル壁に塗装はなく、窓となるべき開…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 目次

はじめに 登場人物紹介 序章 プロローグ 第一章 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 『小説家になろう』掲載作品

『イマ × ソラ』のあとがき

もう10日以上間が空いてしまいましたが、先日投稿した掌編小説『イマ × ソラ』のあとがきをここに書きます。 いつも短編であとがきを書いてはいませんが、一応この作品に込めた意味がありますので、解説がてらに。 といっても、タイトルで察してる方も多いと…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 8

目次へ 同じ日の放課後。 美術実習室で、アルフはペインティングナイフを右手に持ち、キャンバスに向き合っていた。同実習室内では、同じ美術部の部員たちが、めいめいに制作活動を行っていた。 先週の今日、トキワ市主催の絵画展が終わったばかりだった。そ…