2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧
目次へ ――ああ、もう。イライラするなぁ! その日の午後、サクラは数学の講義プログラムを受講しながら、全く集中できずにいた。 今朝の一件以降、<トールシステム>内の3−Aクラスのチャットルームは度々、アルフレッドとナベル家、トゥルーバニランという…
「――今後、SNSの利用を控えてもらえる?」 風紀委員の今井琴音は、クラスメートの天知颯太という男子にそう注意をした。 ネットによる個人情報の流出が問題になる時代だ。琴音は生徒会からの依頼で、SNSの利用で特に問題のある生徒たちに注意を行うことにな…
『魔法技師のノート』を終えた直後に、また新しい掌編小説の連載を twitter で始めました。 そして、それがつい昨日完結しました。 ひょっとしたら、掌編小説というにも不完全に映るかもしれません。 ワンシーンの会話だけのお話ですから。 この話と「葵 透 …
「姫さま、大変です!」 じいやが息せき切って走ってきた。 「じいや、そんなにあわててどうしたの?」 小人の姫がたずねると、じいやはゆっくり息を整えて答えた。 「なんと、人間界では今日から五日間、銀曜日だそうですぞ!!」 「まあ!」 姫は目を輝か…
目次へ 「――ジェームズ、何か用?」 アルフは、何ら警戒することもなく、訊いた。 ジェームズ=ハズウェルというのが彼の名だ。彼は訊かれて、屈託のない笑顔を見せた。 「覚えていてくれたのかい。自己紹介が必要かと思ったよ」 だが、サクラはなぜか、その…
どういうことだ。 文也は混乱していた。 怜と二人で、たった今、学校近くの交差点で、トラックに轢かれる紗花を見たはずだった。 なのに、マンションの前まで戻っている。 「あれ、君は覚えているのか。三十分ほど時間を巻き戻したのだけど」 隣の怜が「また…
目次へ 海外の教育事業者が開発した先進コンピューター・システムをいち早く取り入れたトキワガオカ高校では、実技を除く半数以上の講義はコンピューターによるインタラクティブ・ビデオ方式に置き換わっていた。一方で、従来型のホームルーム制度は健在だっ…
いつか、 詩人になれたなら 君に、やさしい言葉を届けたい。 いつか、詩人になれたなら 世界を やさしい言葉で満たしたい 愛をささやき 光を尊び 瑕ひとつないきれいな言葉で 大勢の人に、やさしさを届けたい いつか、詩人になれたなら。 でも、 それだけじ…
左の部屋は 右扉の奥は 塵ひとつ無い バランスの狂った 清潔な部屋だった 奇怪な異次元空間だった 真っ白な部屋の中央に 空間の中央には 精巧な女神の像が どんな生物にも似つかぬ 飾られていた 異様な彫刻が在った 見るものを 人工物だとしても 虜にせずに…
twitter で連載していた小説『魔法技師のノート』が完結しました! 第1話のツイートは8/3、最終27話のツイートは9/2なので、ちょうど丸一ヶ月の連載でした。 え? もう終わりなの? そんな風に思った人もいるかもしれません。 今回、ストーリー中に描ききれ…
目次へ 「イマールさんなら何か昔のこと、知ってるかなと思って」 登校バスの中で、サクラはそう言った。 自動運転のバスは、いつものように通学路上の停留所を回りながら、学校に向かっていた。 『ローマニラの赤い薔薇期』とは、今を遡ること約三百年前、…
私の世界はいつからか灰色になった。 先生も灰色。友達も灰色。家族も灰色。あなたも灰色。 灰色の世界の中を 灰色の私が動く 食べ物はどれも不味く 音楽はどれも歪んでいた 「」 喋っているのに 何を喋っているのかわからない 自分が何を喋っているのかわか…