崩れかかった建物の前、男が一人うずくまっている。 時折耳を揺らす物音に、顔を上げては、また下ろす。 とりわけ、人の足音には敏感に。 ――また、あんたか。 と、男は声にならない声で言う。 いつの間にか、音もなく老人が立っている。 ――もう、放っておい…
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