文芸創作を再開した2015年を振り返って

約二年半。 それは、このブログと Twitter 上の @YukiNozomu というアカウントをほぼほぼ放置状態にしていた期間になります。 今年は文芸創作家として、大きな意味を持つ一年になるだろうと思います。 三年前――2012年も、自分にとって有意味な一年でした。そ…

『死を夢見る少女』連載を少しお休みします。

更新を楽しみにして頂いている方には、本当に申し訳ありません。 掲題の通り、毎週末に一話ずつ投稿していた『死を夢見る少女〜最後の不死者〜』の連載を、少しの間お休みさせて頂きます。とりあえずは二〜三週間ほどの予定です。 理由は、一言で言うと「キ…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 17

目次へ 翌朝のサクラは、自分の目を何度か疑うことになった。 その日――一月十六日の朝も、彼女は自動運転バスが来るバス停の前で、幼馴染のアルフがやって来るのを待っていた。左手首の腕時計を見る。時刻は、七時三三分だった。 間もなく、アルフはやって来…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 16

目次へ 一九時二〇分。トキワガオカ高校前のバス停から、自動運行バスの最終便が出発しようとしていた。 サクラは疲れた体に鞭を打って走り、なんとかそのバスに間に合った。 すると、その車両には意外な人物が乗っていた。 「ジェームズ! なんであんたも」…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 15

目次へ ――「おめでとう」ってどういう意味? 誰かがそれを訊ねるより早く、テレビジョン・モニタの中のイマールが話しだした。 『ゴールはまだだけど、あなたは目的通り、アグロス=ナベルの末裔にたどり着いた。きっとゴールも近いよ』 イマールの言葉に、ミ…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 14

目次へ アグロス=ナベルの『滅びの魔法』とは何なのか。 俗説はいくつかあった。例えば、アグロス=ナベルは錬金術士で、トゥルーバニランが苦手とする金属を精錬することが出来た、というような。しかし、真実は歴史上の謎となっていた。 「母さんは、何か知…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 13

目次へ 「仮死状態ってこと……?」 アルフは呟いた。 正史一七四二年、『ローマニラの赤い薔薇期』という内戦の終戦間際、ユーリーは共に暮らした家族とクルサナ村の人々の手により、仮死状態にさせられたらしい。 「卑劣なローマニラ軍の奴らも、さすがに墓…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 登場人物紹介

目次へ アルフレッド=クナイ …… 主人公。愛称アルフ。本編の正史二〇二五年時点で、ヒノモト国のトキワガオカ高校に通う高校三年生の男子。美術部。歴史上の人物であるアグロス=ナベルの末裔。 ユーレディカ …… もう一人の主人公。愛称ユーリー。不死の少女…

フェニックス

いつか映画で観た 火の鳥が 今はまぶたの裏で飛んでいる あの夏の夜 キャンプファイヤーで 炎は 高く 高く 空へと吸い込まれて行った 最後の薪が 燃え落ちるまで いま、一つの命の灯が 輝き放っている その灯が続く限り 私もまた 私の焔に薪をくべよう たと…

ハロウィーン企画小説「エビル・コスチューム」後書きに代えて

こんにちは! 木枯らしが吹く季節になりました。 ハロウィーンが終わり、街はこれからクリスマス色に染まっていきますね。 さて、ブログ読者様につきましてはご存知のことと思いますが、先週月曜から10月31日土曜にかけて、ハロウィーン特別企画と称して短編…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 12

目次へ アルフは一人、ダイニングテーブルの席に座り、二人を待っていた。 まず、シャワーを浴び終えたユーリーが部屋に入ってきた。改めて少女の姿を目にして、アルフの心臓は早鐘を打ち始めた。 彼女の肌が白いのはわかっていたが、実際には陶器のように肌…

エビル・コスチューム (6/6)

目次 ドスンッ! カンナは渋谷センター街入り口のツタヤ前で、ふと意識を取り戻した。隣を歩いていたマサキが、落ちていた空き缶に足を滑らせた。カンナもそれに巻き込まれ、二人仲良く派手にすっ転んでしまったのだった。 どうやら一瞬、意識を失っていたら…

エビル・コスチューム (5/6)

目次 それは、あっという間の出来事だった。 「リエ……? 何してるの? 早く逃げて!!」 突然、自分たちの前に立ちはだかった悪魔姿の女性に向かって、カンナは叫んだ。 ジャック・オー・ランタンを被った黒衣の男は、銃口を真っ直ぐリエに向けている。 だが、…

エビル・コスチューム (4/6)

目次 「じゃあ、俺たちはこれからクラブに行くから」 マサキがリエに対して言った。 三人はカラオケを終えた後、渋谷センター街入り口のツタヤ前まで、歩いて来ていた。 「楽しかった! また遊んでね」 リエは無邪気に笑った。 カンナは、リエの顔を改めてじ…

エビル・コスチューム (3/6)

目次 ここはどこだ。 井の頭線の上り電車の中で、ジャック・オー・ランタンを被った男は意識を取り戻した。 そうだ。渋谷に向かっていた。 昨夜、デスクで一度意識を失ってから、記憶が途切れがちだった。頭がずきずきと痛む。 男は右手でコートの中にある物…

ハロウィーン特別企画・短期連載小説「エビル・コスチューム」に寄せて(目次込み)

もうすぐハロウィーンですね! みなさん、準備はばっちりでしょうか。 さて、月曜からハロウィーン特別企画と称して、新作の短編小説の連載を行っています。 『エビル・コスチューム』目次 第一話 / 第二話 / 第三話 / 第四話 / 第五話 / 第六話 / あとがき …

エビル・コスチューム (2/6)

目次 「マサキ、やる気なさすぎ」 カンナは待ち合わせに遅刻して来たマサキに、容赦ない駄目出しをした。カンナと同じ専門学校に通う彼は、ドン・キホーテで買ったらしい囚人服の上下を着ただけだった。 そもそも、ハロウィーンは大人のコスプレイベントでは…

エビル・コスチューム (1/6)

目次 どうにでもなってしまえばいい。 安アパートにある居室で、男はぼうっとパソコンのモニタを眺めながら、煙草をくゆらせていた。デスクの上は雑然としている。 キーボードの左側に、サバイバルナイフと拳銃があった。拳銃はインターネット上の、とある掲…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 11

目次へ トゥルーバニラン。少女は確かにそう言った。 それは、正史一七四二年に終結した『ローマニラの赤い薔薇期』と呼ばれる内戦によって、絶滅させられたはずの民族の名だ。 ユーレディカ、と少女は名乗った。 「ユーリーでいいわ」と彼女は言った。アル…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 10

目次へ アルフにとって長い、しかし、たった数秒ほどの時間が経った。 名も知らぬ少女は、アルフの右拳を自身の心臓に突き立て、まるで自身を貫くかのように力を込めた。 「……ぅぐぁっ」 アルフは呻いた。少女の爪が腕に突き刺さり、右拳からめりめりと骨が…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 9

目次へ それは血痕だった。 どこからか、カラスの鳴き声が聞こえた。見上げると一羽のカラスが、剥き出しのコンクリートのビル壁から飛び去って行った。 十二階建てのそのビルは、完成間近で放棄されたもののようだった。ビル壁に塗装はなく、窓となるべき開…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 目次

はじめに 登場人物紹介 序章 プロローグ 第一章 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 『小説家になろう』掲載作品

『イマ × ソラ』のあとがき

もう10日以上間が空いてしまいましたが、先日投稿した掌編小説『イマ × ソラ』のあとがきをここに書きます。 いつも短編であとがきを書いてはいませんが、一応この作品に込めた意味がありますので、解説がてらに。 といっても、タイトルで察してる方も多いと…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 8

目次へ 同じ日の放課後。 美術実習室で、アルフはペインティングナイフを右手に持ち、キャンバスに向き合っていた。同実習室内では、同じ美術部の部員たちが、めいめいに制作活動を行っていた。 先週の今日、トキワ市主催の絵画展が終わったばかりだった。そ…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 7

目次へ ――ああ、もう。イライラするなぁ! その日の午後、サクラは数学の講義プログラムを受講しながら、全く集中できずにいた。 今朝の一件以降、<トールシステム>内の3−Aクラスのチャットルームは度々、アルフレッドとナベル家、トゥルーバニランという…

イマ × ソラ

「――今後、SNSの利用を控えてもらえる?」 風紀委員の今井琴音は、クラスメートの天知颯太という男子にそう注意をした。 ネットによる個人情報の流出が問題になる時代だ。琴音は生徒会からの依頼で、SNSの利用で特に問題のある生徒たちに注意を行うことにな…

#詩の君 掌編連載を終えて

『魔法技師のノート』を終えた直後に、また新しい掌編小説の連載を twitter で始めました。 そして、それがつい昨日完結しました。 ひょっとしたら、掌編小説というにも不完全に映るかもしれません。 ワンシーンの会話だけのお話ですから。 この話と「葵 透 …

銀曜日の週のおとぎばなし

「姫さま、大変です!」 じいやが息せき切って走ってきた。 「じいや、そんなにあわててどうしたの?」 小人の姫がたずねると、じいやはゆっくり息を整えて答えた。 「なんと、人間界では今日から五日間、銀曜日だそうですぞ!!」 「まあ!」 姫は目を輝か…

死を夢見る少女 〜最後の不死者〜 6

目次へ 「――ジェームズ、何か用?」 アルフは、何ら警戒することもなく、訊いた。 ジェームズ=ハズウェルというのが彼の名だ。彼は訊かれて、屈託のない笑顔を見せた。 「覚えていてくれたのかい。自己紹介が必要かと思ったよ」 だが、サクラはなぜか、その…

「創る」人 〜 #twnvday 「つくる」より 〜

どういうことだ。 文也は混乱していた。 怜と二人で、たった今、学校近くの交差点で、トラックに轢かれる紗花を見たはずだった。 なのに、マンションの前まで戻っている。 「あれ、君は覚えているのか。三十分ほど時間を巻き戻したのだけど」 隣の怜が「また…