淡い青の海があった
何人も 触れることは叶わなかった
海には
気まぐれな白い雲たちが棲んでいた
好き勝手に海を漂流しては
群れを成し 山のように積み重なって
次々に形を変えながら
青い空海を 埋め尽くしていた
遮るもののない 太陽の光が
そんな雲々の陰影を 色づけた
一秒ごとに
世界は姿を変えていった
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ずっと見ているのね、と
愛すべき人が隣で言った。
僕は、返事もせずにうなずいた
「当機は間もなく着陸態勢に入ります」
アナウンスの声が告げた
ベルト着用サインが点灯する
旅客機は高度を下げていく
雲を抜けて
重力に その身を委ねて