センサー

 早朝5時。
 うっすらと目を開けた智恵は、意識がはっきりしないままゆっくりと頭を左右に動かした。
 薄暗いオフィスは閑散としている。プロジェクトの追い込みで徹夜した智恵以外には、誰もいないようだった。
 途端、智恵は側頭部に衝撃を受けた。
 為す術もなく、地面に頭を叩きつけられる。
「動くな」
 低い男の声。
 不法侵入者だろうか。智恵は恐怖した。
 しかし、身を捩って、男の方を振り向くと自分の部下の新入社員だったので、智恵は激昂した。
「あなた、何のつもりよ」
 すると彼はうろたえた。「ああ、動かないで下さいよ」
 そのとき、オフィスに警報音が鳴り響いた。慌てる智恵。
 彼はため息をついた。「天井に動体センサーがついてるんで、動くと警備会社が飛んできちゃうんですよ」


 2015/11/28 加筆修正して、小説家になろう に掲載しました。