狩り

白く輝く無慈悲な太陽が
干上がった大地から 何もかも蒸発させる頃

私と彼女は
並走していた

灼けるような暑さも忘れ
私たちは
ただ 明日を生き抜くためだけに
疾駆していた

心臓が 休むことなく 鼓動を刻み
全身が血流で満ちてゆく

一歩ごとに
蹴り上げられた赤土が 舞い上がり
遥か彼方へ落ちてゆく
だがやがて私は その感触さえ忘れた

彼女が向きを変え
刹那 私もそれに倣う

何度も向きを変え
それでも私を振り切れない彼女は
焦燥を隠しきれず
幾度目かの跳躍に失敗して
虚しく地面に足を折った

私の爪は
彼女の脚を捉え
背を傷つけ
その命を徐々に削ってゆく

草むらを転がりながらも
彼女は再び駆けようとする
行く末を悟りながらも
受け入れることはできないと
主張するかのように

ほんの十数秒の間に
一つの決着が訪れ
彼女は私の前脚の下で
力無く 鳴いていた

喉に深々と突き立てた牙から
溢れ出す鮮血の奔流が
私の飢えと渇きを満たしてゆく

血の臭いが
他の捕食者たちを呼ぶ前に
私と私の仔は
彼女であったものを貪った

西の山に燃え尽きてゆく太陽が
バオバブの影を 長く大きく伸ばす
サバンナが赤褐色に染まってゆく

私と私の仔は
闇が大地を支配する前に
今夜のねぐらを探しに向かう

どこからともなく やってきた
四羽のコンドルが
忙しなく彼女の死骸をついばんでいた