ハイイロオオカミ未満の何かのなかの何か

私の世界はいつからか灰色になった。
先生も灰色。友達も灰色。家族も灰色。あなたも灰色。

灰色の世界の中を 灰色の私が動く

食べ物はどれも不味く
音楽はどれも歪んでいた

「」

喋っているのに 何を喋っているのかわからない
自分が何を喋っているのかわからない
何をしているのかもわからない
何もする気になれない

走っても、走っても、
君のいないこの世界で
私はどう生きればいいのか

 

いつからか私は世界に閉じ込められていた
狭い世界
触れればすぐ境界に達する
そこは壁 塵ひとつ無い
そこに映るのは私
そう、それは鏡。
無限に私だけが映る回廊 あるいは檻

私は私に囲まれ
たくさんの私と見つめ合い
吐き気を催し
私を拒絶し
混乱し、錯乱し、拒拒絶絶しし、
あらゆる鏡を叩き割った
鏡は砕け散り 四散し
すべてのカケラが私に突き刺さった

私は、たぶん何度か、死んだ。
生きてる。でも死んでる。

私はうつ伏せに倒れた
何も見えない
何も聴こえない

 

でも、
その鏡の境界の
世界の向こう側の世界には、

  誰かがいるかもしれない
  私に何かをくれる誰か
  灰色の私は何も望まない、けれど。

その砕け散った鏡の向こうから、
誰かが、

  誰かとは 誰なのか

誰かが私に手を差し伸べ
導くならば、

  その先に何があるというのか
  何もないかもしれない
  すべて絵空事かもしれない
  信じられるかどうか、次第なのかもしれない


「おはよう」
「……お、おはよう」
「何考えてたの?」
「……別に、何も」
「そう? じゃあ、行こうか」
「……うん」