小説とライトノベルの違い

小説とライトノベルの違いは、明確なようでいて、境界線上ではやや曖昧な気がする。
そもそも、この違いは大多数の人にとってはどうでもいいことだろう。
小説だけ読む人や、ライトノベルだけ読む人はいるかもしれないが、その人たちにしても、小説だから、あるいはライトノベルだからという理由で読んでいるわけではないだろう。たぶん、好きだから、おもしろいから、という理由で読んでいると思う。
小説とライトノベルの違いが最も重要になるのは、どちらを書こうか迷っている作家志望者たちに対してかもしれない、と思う。

最近、『狼と香辛料』の一巻と、『とある魔術の禁書目録』を三巻まで読んだ。
その少し前には、『天地明察』を、その前には京極夏彦の『ルー・ガルー』を読んだ。

楽しんで読むことができる、という点においては、どちらも変わらない。
が、楽しみ方はやや異なる。
ファンタジックなライトノベルの場合、たいていキャラクターが好きかどうかが重要で、そのキャラクターの息づかいが、文章を通して感じられることを楽しんでいるように思う。ストーリーに緻密さも新奇性も求めていなくて、退屈しない展開であればいい。漫画を読む感覚に近い。
ふつうの小説の場合は、ジャンルによっても異なるが、意外性のあるよく練られたストーリーを好む。そこに感動があると尚いい。登場人物が魅力的であるに越したことはないが、そこまで魅力的でなくても楽しむことは成立する。

キャラクターコンテンツであることは、ライトノベルの特徴を表す一つの重要な要素だと思う。
大塚英志氏も、著書『キャラクター小説の作り方』において、ライトノベルを「キャラクター小説」としたそうな。
強いキャラクターがいるから、漫画、アニメ、ゲームといった二次コンテンツへの派生もしやすいように思う。

どちらかといえば、それはライトノベルレーベルの意図するところなのだろう。
だから、若者に好まれるようなイラストを作品に挿す。
ライトノベル以外の小説の場合は、近年は全く挿絵を見ないことの方が多い。
それは、読者がそれを求めていないからかもしれない。

しかし、魅力的なキャラクターを作りだすことに成功し、シリーズ化している小説ももちろん存在する。
東野圭吾の『ガリレオ』シリーズなどが好例だと思う。
赤川次郎の『三毛猫ホームズ』シリーズなども、この部類に入れることができるかもしれない。
(ミステリー以外の例もあると思うが、ちょっと自分の読んだ範囲ではいい例が思いつかない。)

たぶん、小説であっても、キャラクターを前面に出すような作り方(あるいは売り出し方)は可能で、成功すれば作品の長命化や、他メディアへの派生につながるだろう。
松岡圭祐の『万能鑑定士Q』シリーズなんかは、そうした狙いもあったのかもしれない。この作品は、ライトノベルとその他の小説の境界線ぐらいのところに位置する気がする。

結局、ライトノベルとはなんなのか。
Wikipediaによれば、ライトノベルの定義はあいまいではっきりしないが、どうやら「主としてライトノベルを出版するレーベルの、表紙や挿絵にアニメ調のイラストを多用する若年層向けの小説」というのが、現時点でのもっとも確からしい定義のようだ。

で、同じくWikipediaによればライトノベルは小説の一種なので、小説とライトノベルに違いはない、というのがこの記事のタイトルに対する答えである。
また、タイトルを「ライトノベルとそれ以外の小説の違い」とするならば、上の定義に外れるものがライトノベル以外の小説ということになる。

結論めいたことを言えば、ライトノベルであろうがなかろうが、魅力的なキャラクター小説を書くのはよいことだ、となる。

しかし、翻って自分について言えば、今はまだまだ短い話から少しずつ試行錯誤している段階なので、キャラクターを作ることよりも、話を作るところを優先している。