天使と悪魔

      左の部屋は   右扉の奥は
     塵ひとつ無い   バランスの狂った
   清潔な部屋だった   奇怪な異次元空間だった

 真っ白な部屋の中央に   空間の中央には
   精巧な女神の像が   どんな生物にも似つかぬ
     飾られていた   異様な彫刻が在った

      見るものを   人工物だとしても
虜にせずにはいられない   何の機能性も見出だせない
   美の結晶のような   「それ」を
       ガラス像   彫刻と呼べるのかさえわからない

     私は女神像を   私は異次元の隙間から
 両手で大事に抱え込み   大きな鉄槌を取り出すと
   空色の窓へと運び   「それ」に向かって振り上げ

    外へ投げ捨てた   ひと思いに叩き潰した

   ガラスの女神像は   奇怪な彫刻は
   真っ逆さまに落ち   紙切れのように吹き飛んで
   派手な音を立てて   次元の彼方に
     粉々に砕けた   消え去った

 

       私は真ん中のホールに戻る
      身の丈ほどの大筆を持ち出して
       白と黒とが混ざった墨で
        荒々しく、力の限り、

            ×

         の一字を書いた。